フェイクニュースの時代に戻ってきた伝説のコンテンツ…「放送禁止」を大勢が信じ、翻弄された理由とは?
きれいごと発言の真意まで見抜けるか
そして、12年ぶりとなる劇場版『放送禁止 ぼくの3人の妻』が公開された。一夫一妻しか認められていない日本で、一夫多妻制を実践している4人の男女の生活をカメラは映しだしている。
これまでテレビ版でも劇場版でも「放送禁止」は、大家族=愛情いっぱいの親子関係という紋切り的な描写に対する欺瞞性をあぶりだしてきたが、新作『ぼくの3人の妻』は改めて家族の在り方を俎上にしている。夫婦別姓、少子高齢化など家族にまつわる多くの問題が、いまの日本にはある。社会の闇を映しだしてきた「放送禁止」ならではのテーマだろう。
魅力的な3人の美女たちとの共同生活を男性webデザイナーは満喫していたが、4人が暮らす瀟洒な一軒家にはなぜか開かずの間があり、男性は夜な夜な助けを求める奇妙な声を聞くようになる。オカルトっぽい展開は「放送禁止」ではおなじみだが、やがて4人の関係性は取材クルーたちが想像していた以上に複雑怪奇であることが浮かび上がる。
3人の妻を持つ男性は「自分が家族を守る」と断言し、怪奇現象の謎を解き明かそうとするが、こうしたきれいごと発言には別の事実が隠されているのもシリーズのパターンである。耳なじみのいい甘い言葉ほど、疑わしいものはない。
フェイクドキュメンタリーブームと社会の不穏さはリンクする
これまでフェイクドキュメンタリーは何度かブームが起きている。数多くの類似作を生んだ『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が製作された1990年代には、湾岸戦争が起きている。「放送禁止」の放送が始まったゼロ年代は、米国で起きた同時多発テロのニュース映像が世界中に衝撃を与えた。
長江監督と並ぶ、フェイクドキュメンタリー界のもう一人の重要人物である白石晃士監督のオリジナルビデオ作品「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」は、福島第一原発事故の記憶が生々しい2012年にシリーズが始まった。不穏な社会背景が、フェイクドキュメンタリー人気の背景にはある。
コロナ禍を経て、復活を果たした劇場版『放送禁止 ぼくの3人の妻』は、これまでのシリーズ未見者でも、考察系サスペンスやヒトコワ系ホラーのおもしろさに魅了されるに違いない。登場人物たちの発言内容はどこまで正しいのか、台詞は都合よくカットされていないか。真相を知る手掛かりは映像のなかに映り込んでいないか。目を凝らしてスクリーンに向き合う、98分間になるはずだ。
フェイクニュースが飛び交う現代において、リテラシー能力を磨く格好の作品ではないだろうか。
文/長野辰次
