ハン・ソヒ×チョン・ジョンソのガールズノワール『PROJECT Y』釜山国際映画祭を熱狂させたトークをプレイバック!
喜びと緊張交じりの上映後GV
続いて行われた、BIFF初上映後のGV。トロント国際映画祭での観客の反応ももちろん得がたいものだったが、やはり自国の映画ファンの反応が気になるところなのか、イ・ファン監督をはじめ口々に緊張を口にしながらも和やかなムードで挨拶がスタートした。ハン・ソヒは「女性ジャンルものでこんなにパワフルで生き生きとした作品が少ないし、私に役としてやって来たのが嬉しい」と改めて出演の喜びを語った。
3階席までギッシリの観客に驚いた様子を見せたキム・ソンチョルは「映画って本当に不思議だなって、今日改めて感じました」と、撮影を共にした俳優陣やスタッフ、監督への感謝の言葉を口にした。そして「僕にはト社長みたく悪魔の心があまりないんです。全く無いと思ってください!でもイ・ファン監督が、本当“地獄で生まれた人”みたいにディレクションしてくださいました」と、素顔の自分とは違う役を演じきったことについて満足感を見せた。
ひときわ歓声を浴びたファンソ役のチョン・ヨンジュは、開口一番「私はあんな怖い人間じゃないです!捕まえて食べたりしませんよ(笑)」とユーモアを加えて会場を笑わせた。良いストーリーと自分にとって新境地とも言えるキャラクターを演じられたこともあり楽しく観ていたそうだが、やはり今日は特別感慨深かったようで「映画を見る間ずっと吸い込まれる感じがした」と、込み上げる思いを口にした。
イ・ジェギュンは「ソックは人生の目標がはっきりした人間。金のことだけを考えて生きている人間なので、演じているときに恥じ入る気持ちにならなかったと言ったら嘘になる。ソックはなぜこういうことを考えて生きているんだろうと悩みながら演じました」と、役作りに対する悩みも口にした。そして「若い俳優たちが一緒にシナジーを出せる作品は多くないんです」と、本作に関心を寄せてもらえるように力を込めた。ハギョン役のユアも、「初めて一緒にした映画作業だった。観客の方々が見る間ずっと映画に没頭して集中して見てくださる姿を見るととても感謝した」と胸がいっぱいの気持ちを語った。
そしてたったいま見終わったばかりの観客と、ネタバレありのQ&Aがスタートした。誰もが韓国で新たに生まれた、主として女性キャラで構成された犯罪ジャンルものに興味津々な様子だった。魅力的なポイントについてハン・ソヒは韓国映画に珍しいパワフルな女性2人が主人公であることを再び強調し、さらに「ラストから先、2人の旅路にも期待してほしい」と答えた。チョン・ジョンソは「クラブのドライバーという職業に女性がいないことは理解していまして、でも私は何かを真似て役作りをするスタイルではないので、むしろ良かったと思います。一夜にして人生が変わるような大金を得ようと目論む人間をよく演じられたんじゃないでしょうか」と、ドギョンの完成度に自信をのぞかせた。
男性主人公が多かったノワール映画を女性で撮り上げた監督と俳優たちの思い
さらにイ・ファン監督は「こういうノワール映画、犯罪ものの作品をやるのは、これまで男性主人公が多かったですよね。本作はまた、家族の歴史の映画でもあると思います」と、ノワールにとどまらない本作の多様な見方を示した。『パク・ファヨン(原題:박화영)』『大人たちにはわからない(原題:어른들은 몰라요)』とイ・ファン監督のフィルモグラフィーを知る観客から、なぜ若者をテーマに映画を撮り続けているのか質問が及んだ監督は、その原動力を語った。「私はまず人間に対して興味関心があって、なかでも10代、20代の成長というテーマに興味が強いんです。ミソンとドギョンは10代ではなく20代ではあるんですが、10代のような2人が20代として成長していく映画でもあります。あらゆる場面で困難や試練に直面していて、その中で絶えず選択を繰り返している。そうしたことを通して成長する彼女たちの姿を描きたいんです」。
オープントークでもイ・ファン監督は、「『PROJECT Y』はノワールだがファンキーな映画。私の前作よりも力が抜けているので、開始とともに車が走るような気持ちで楽しんでもらいたい」とも話していたが、GVでの俳優陣は、女性2人による映画だからといって何か“特別な映画”だとして捉えるのではなく、むしろこれまで男性たちが表現してきたノワールと同じように観てほしいという思いを語っていた。それはハン・ソヒやチョン・ジョンソが言及したように未だパワフルなジャンル的ガールズムービーが少ない韓国映画界へのささやかなカウンターパンチのように感じる。公開が待ち遠しいばかりだ。
取材・文/荒井 南

