セバスチャン・スタン主演×A24製作の不条理スリラー『顔を捨てた男』顔の“変化”を捉えた新場面写真

セバスチャン・スタン主演×A24製作の不条理スリラー『顔を捨てた男』顔の“変化”を捉えた新場面写真

『サンダーボルツ*』(公開中)や「アベンジャーズ」シリーズのセバスチャン・スタンが主演を務め、スタジオA24が製作する映画『顔を捨てた男』(7月11日公開)より、新たな場面写真が解禁された。

【写真を見る】不安げな表情を浮かべるエドワード(セバスチャン・スタン)
【写真を見る】不安げな表情を浮かべるエドワード(セバスチャン・スタン)[c]2023 FACES OFF RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

本作はこれまで独創的な作品で映画史を塗り替えてきたスタジオA24が、気鋭の監督アーロン・シンバーグの才能に惚れ込み、初のタッグを組んだ不条理スリラー。キャストには主演のスタンをはじめ、共演に『わたしは最悪。』(21)のレナーテ・レインスヴェ、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(13)のアダム・ピアソンら実力派が顔を揃えている。

顔に極端な変形を持つ俳優志望のエドワード(スタン)。自分の気持ちを閉じ込めて生きる彼はある日、外見を劇的に変える過激な治療を受け、念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩み出した矢先、目の前に現れたのは、かつての自分の「顔」にそっくりな男オズワルド(アダム・ピアソン)だった。その出会いによって、彼の運命は想像もつかない方向へと逆転していく。

治療後の自分の顔を鏡で確認するエドワード(セバスチャン・スタン)
治療後の自分の顔を鏡で確認するエドワード(セバスチャン・スタン)[c]2023 FACES OFF RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

このたび解禁されたのは、主人公エドワードが辿る「顔」の変化を捉えた3点の場面写真。エドワードが行う過激な治療についてマスクを使って説明する医者、治療後の自分の顔を鏡で確認するエドワード、そして外見は変わっているのに不安げな表情を浮かべるエドワードの様子が切り取られている。

“外見が変わることで、主人公は幸せになれるのか?”という展開だけなら容易に想像できるかもしれないが、本作は、かつての自分の「顔」にそっくりな男が登場するという“ひねり”があるところがポイント。見た目はかつての自分に似ているが、性格は真反対のオズワルドの登場により、もともと卑屈な性格のエドワードは、嫉妬、執着、ないものねだり…といった複雑な感情がないまぜになっていく。シチュエーションは違えども、主人公エドワードの姿に自分の経験を投影する人も多いかもしれない。運命を変えるためには何が必要なのかを考えさせられる重厚なテーマとブラックユーモアが共存する本作は、サンダンス国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに瞬く間に話題となり、第74回ベルリン国際映画祭最優秀主演俳優賞(銀熊賞)、第82回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ)を受賞、第97回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にもノミネートされるなど高い評価を得ている。

自分らしさとは「外見」からくるものなのか。「内面」から滲みでるものなのか。それとも…?『顔を捨てた男』同様、切っても切り離せない「外見」と「内面」を掘り下げながら、観るものにアイデンティティを問う映画を5作品ご紹介しよう。

現在公開中の『サブスタンス』(24)は、若さと美しさに執着したエリザベスを主人公に、ルッキズムとエイジズムをテーマに描いた異色のホラー。観るものに女性の外見に対する風潮を問う話題作だ。この作品は第97回アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。元トップ人気女優エリザベス(デミ・ムーア)は、年齢と共に容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、新しい再生医療「サブスタンス」に手を出す。接種するや、エリザベスの背中から若く美しい女性スー(マーガレット・クアリー)が現れる。抜群のルックスとエリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。しかしひとつの精神を決められたルールでシェアする存在となったエリザベスとスーはいつしかいがみ合うようになり…。

今年1月に逝去し映画ファンに衝撃を与えたデヴィッド・リンチの代表作ともいえるのが『エレファントマン』(80)。外面だけで内面を判断され差別される実在した青年ジョゼフ・メリックを主人公に、彼を取り巻く人々との交流を通して、人間の内面にある美しさや残酷さを浮かび上がらせる。舞台は19世紀末のロンドン。身体的特徴から見世物小屋で働かされていたメリックを、外科医のトリーヴスが研究対象として保護。最初は何も話さず、極度の人間不信だったメリックを周囲は知能が低いと思っていたが、親切なトリーヴス夫妻と過ごすうちに彼が知的で優しい人物だと分かっていく。

アカデミー賞監督ポン・ジュノの最新作として日本でも今年公開された『ミッキー17』(25)。失敗だらけの人生を送ってきた男ミッキーは、何度でも生まれ変われる“夢の仕事”で一発逆転を狙おうと、契約書をよく読まずにサインしてしまう。しかしその内容は、身勝手な権力者たちの命令に従って危険な任務を遂行し、ひたすら死んでは生き返ることを繰り返す過酷なものだった。しかしある日、手違いによりミッキーの前に全く同じ見た目にも関わらず性格は異なる“自分の完全コピー”が現れる。ミッキーは最初は拒絶するものの、次第に“異なる自分”を受け入れ、手を組んでいく。

A24が製作を手掛け、第95回アカデミー賞で主演男優賞(ブレンダン・フレイザー)、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのが、ダーレン・アロノフスキーの監督作『ザ・ホエール』(22)。自己の弱さや脆さを埋めるかのように、272キロの巨体へと変貌を遂げたチャーリーが、痛みを伴いながらも娘や自分自身と対峙する姿を描く。40代のチャーリーはボーイフレンドを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで健康を損なってしまう。看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てているが、症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。死期が近いことを悟った彼は、疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた。

最後に紹介するのは監督のシンバーグが“『顔を捨てた男』に影響を与えた1作”として挙げている『ジキル博士とハイド氏』(31)。舞台は19世紀末のイギリス。人間を善悪の二つに分離する研究をしていたジキル博士は、自身が生み出した薬品を自分に投与。ジキル博士は、外見も内面も変化し、自分に潜む悪の要素のみの怪物ハイド氏となってしまう。善良な紳士だったジキル博士は、ハイド氏になることで、どんなに悪いことをしてもまた再度ジキル博士に戻ることで罰せられないことに快感を覚えていく。


人は“外見”と”内面”、どちらが大切なのか。そんなことを考えさせられる『顔を捨てた男』は7月11日(金)より公開。

文/スズキヒロシ

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