吉永小百合、人生初ピアス!『てっぺんの向こうにあなたがいる』で登山家、田部井淳子をモデルにした役に挑戦
吉永小百合が主演する、世界最高峰エベレストの女性世界初登頂に成功した登山家、田部井淳子の実話を基にした映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(10月31日公開)の完成報告会見が5月13日にグランドプリンスホテル高輪で開催。吉永、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、天海祐希、佐藤浩市、阪本順治監督が登壇した。吉永は役作りのため、人生初のピアスを開けたそうで「今日もつけてきました。本物の田部井さんのピアスです」と満面の笑顔でピアスを披露した。
吉永は「本当に過酷な撮影だったのですが、なんとかやり遂げられてホッとしています。本物の田部井淳子さんがてっぺんの向こうから『よくやったね、頑張ったね』って私たちに言ってくださっているような気がします」と手応えを明かす。124本目の映画出演作となった本作で、初の登山家役に挑んだ吉永は「田部井さんには2012年に初めてお会いして、その時にすごくファンになってから、こういう形で私が演じることになって、すごく幸せでした」と万感の想いを語った。
登山家、そして母として頑張る多部純子(吉永)を優しく見守り支える夫、多部正明役の佐藤は「この世界に入る45年前、将来吉永さんの相手役をやることになると周りに言ったら、鼻で笑われるか、怒鳴られるかのどっちかでしたでしょうね。いまこうして吉永さんの相手役をさせていただくなんて想像もしていませんでした。撮影に入る直前、吉永さんに、『撮影期間中は、お母さん、お父さんと呼ばせてください』と言ったら快く受け入れてくださって、それがすごく心の支えで。支えているようで支えられている、映画の外でもそんな関係性ができればいいなと思っていました」と撮影を振り返った。
純子の盟友で、エベレスト登頂の相棒でもある北山悦子役を演じた天海。吉永とは『最高の人生の見つけ方』(19)以来の共演となり、今回も吉永と盟友になる役柄を演じた天海は「(純子と悦子のことを)支え合い、お互いの存在に励まされていた関係だったのでは、といまでは思いますし、おこがましいけれど、小百合さんとの関係もそうだと思います。素直にまっすぐに悦子さん役に入れたと思います。(純子は)すごくバイタリティがあって、力強くひたむきで、吉永さんにぴったりな役でした。そばで見つめ続けることができて幸せでした」としみじみ語る。
1970年代と現代、2つの時代がクロスする本作で、純子と正明の青年期をそれぞれ演じたのんと工藤。のんは「素敵な役をいただけて興奮していました。撮影に入る前に、吉永さんの出演作をたくさん拝見しましたが、吉永さんの瞳の力に魅了されました。どうにか1%くらいその瞳パワーを表現できないかと研究しました」と語る。記者から、その瞳パワーを表現するために意識していたことを問われると「スマホのゲームをやめたり、ブルーライトカットの眼鏡をかけたり、目を守る行動をとりました」と語り、会場の笑いを誘った。
工藤は「このお話をいただいた時、本当に心からうれしくて、飛び跳ねました。吉永さんをはじめ、素敵な先輩方、そして監督のもと、この作品に携われたことが、僕の役者人生にとっても大きなものになりました。クランクイン前に佐藤浩市さんともお話をして、ちょっとした演技のポイントも伺いました。佐藤さん演じる正明さんにどうすれば近づけるか、と毎日毎日想像して考えていました」と明かした。
家族の絆が描かれる本作で、母を陰ながら支え、応援する多部家の長女、教恵役を演じた木村は「緊張して現場に入ったら両親がすごくかわいくて。この両親を見て育ったら娘もそうなるよね、というくらいチャーミング。将来、私もこんな夫婦になりたい、と思ったくらいかわいい夫婦でした。夫婦役のお二方とご一緒した時間は短いですが、本当の家族になれたような気がします」とコメント。
多部家の長男であり、時に両親に反発するも、登山を通じて家族の絆を取り戻していく真太郎役を演じた若葉は、「吉永さんと正面切って演じるのはとてつもない緊張感と恐怖に向き合わなければいけませんでしたが、現場に行ったら、佐藤浩市さんが軽やかに『よろしくな』と声をかけてくれて安心しました」と、以前にも共演経験がある佐藤の言葉に救われたエピソードを披露。
天海演じる北山悦子の青年期を演じた茅島は「自分が生まれていない時代の話なので、見たことがないものがたくさんあって。登山の経験もないので、やったことがないこと、見たことがないものをどう演技に落とし込めばいいのか、という苦労がありました」と役作りに苦戦したことも明かした。
実話ベースの本作を撮った阪本監督は「田部井さんの寛容さに支えられてできた映画です。人の人生を2時間にまとめるのは不可能です。純子さんの信念はぶれないようにしながら、ご家族が託しますとおっしゃってくださったのが心の支えでした」と撮影時の心境を語りつつ、とっておきの秘密を暴露。「純子にアプローチするために、今回吉永さんは田部井さんと同じピアスを同じ位置に開けたんです。これ記事になるでしょう?」と会場の笑いを誘った。
吉永は「この役は開けるしかない!と思って開けました。ただ大変だったのは、1か月泳いではいけないということ。泳がないというのは、私にとってとてもつらいことでした。とにかく、今回の役に没頭するために開けましたが、いまとっても解放されたような気持ちになっています」と笑顔を見せた。
また、のんと二人一役で淳子役を演じたことについて、吉永は「のんさんが本当にかわいくて。自分にこんな娘がいたらいいなと思うくらいでした。坂本龍一さんとのコンサートで朗読した時に心が通い合っていましたが、今回もよかったと思います」とコメント。
過酷な登山ロケでのエピソードについて吉永は「田部井さんが実際にトレーニングされていた埼玉県の日和田山に登ったのがハードで。汗でびちゃびちゃになりながら、常にお父さんが引っ張ってくれて」と言うも、佐藤は「吉永さんは撮影中、ひと言も疲れたとおっしゃらないんですよ。僕は隣で疲れただのなんだの言っているのに。感服しました」と吉永に脱帽する。
本作が124本目の出演作となった吉永だが、「ご自身の芸能人生で、いまは何合目だと思いますか?」と問われると「8合目くらいでしょうか、元気でやれる限りは、田部井さんのセリフじゃないですけど、一歩ずつ歩いて行けたらと思います」と語る。佐藤が「いまは7合目あたりまで来て、引き返そうかな、と思っております(笑)」と答えると、天海は「万年5合目。これからも頑張ります!」と襟を正した。
また、本作の撮影で得たもの、新たに感じたことについて吉永は「だんだんセリフが覚えられなくなって、今回佐藤浩市さんと若葉さんにとってもご迷惑をおかけしたシーンがあったんです。それはたぶんずっと後まで引っかかっていくことだと思いますが、これからも役をいただけることがあったら、もっともっと勉強して、これからも乗り越えていきたいと思います」と決意を新たにする。大女優ながらも謙虚で勤勉な吉永の姿勢に全員が見入っていた会見となった。
文/山崎伸子