【ミニシアターランキング】『Playground/校庭』が先週から2位に大躍進!3月14日~3月16日の成績を紹介

【ミニシアターランキング】『Playground/校庭』が先週から2位に大躍進!3月14日~3月16日の成績を紹介

3月14日から3月16日までのミニシアターランキング(公開30館以下スタートの作品が対象)が興行通信社から発表された。先週5位から1位にジャンプアップした『親鸞 人生の目的』(公開中)が今週もトップの座をキープ。『Playground/校庭』(公開中)が、先週の5位から2位へと順位を上げていることにも注目したい。先に公開された『小学校~それは小さな社会~』『型破りな教室』と同じような快進撃で、自己の形成に関わる教育の問題を扱ったこの手の作品がミニシアターでは強いということを印象づけた。そんななか、ランキングに新風を吹き込んだのが、初登場で3位と4位に飛び込んだ『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』(公開中)と『春の香り』(公開中)だ。前者は高校3年生の視点で、アメリカのいまをシュールに描いたロードムービー。後者は、脳腫瘍を患いながらも漫画家を目指し、18歳で亡くなった坂本春香さんの実話がベースの青春ムービー。5位の『ケナは韓国が嫌いで』(公開中)を含め、女性が自分探しをしたり、自分を取り巻く受け入れ難い環境に抗う作品に人気が集まっているのも最近の傾向かもしれない。

【ミニシアターランキングトップ5】(3月14日~3月16日)

1位『親鸞 人生の目的』(先週1位→)

2位『Playground/校庭』((先週5位↑)

3位『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』(NEW)

4位『春の香り』(NEW)

5位『ケナは韓国が嫌いで』(先週4位↓)

2位の『Playground/校庭』はベルギー出身のローラ・ワンデル監督の初長編映画だが、カンヌ国際映画祭批評家連盟賞を受賞した彼女の作家性や才気に期待して、本作を観る人も多いような気がする。学校という“小さな社会”を主人公の少女の視点で描く手法がとにかく圧巻で、校庭や教室のシーンしか映さないスタイルを徹底。綿密に設計された音響を駆使しながら、映画はそこで子どもが見たり、感じたりするものだけで構成されるから、観客は子どもたちと同じ目線で学校に放り込まれた彼らの不安や苦しみを追体験できるのだ。そこでなにを感じるのか?それは観た人にしかわからない。そんな周到な映像表現も噂を呼び、観客の動員につながっているような気がする。

不思議の国、アメリカに迷い込んだリリアンが見たものとは?
不思議の国、アメリカに迷い込んだリリアンが見たものとは?

3位の『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』も恐怖とユーモアが交錯する現代アメリカのリアルな闇を、『Playground/校庭』と同じように、サウスカロライナ州の高校3年生リリアン(タリア・ライダー)の視点で描いているところがおもしろい。修学旅行でワシントンD.C.を訪れた彼女はバーで銃乱射事件に遭遇し、逃げ込んだ店のトイレにあった秘密の扉から不思議な国、アメリカに迷い込んでいくが……。彼女がそこで見るもの、体験するものが、撮影監督出身のショーン・プライス・ウィリアム監督が16ミリフィルムで撮影したドキュメンタリーっぽいリアルな映像とシュールなタッチで寓話のように浮かび上がる。その「不思議の国のアリス」のような味わいも人気の秘密なのでは?アメリカ旅行に手ぶらで行ける、その手軽さもいいのかもしれない。

脳腫瘍と闘いながら漫画を描き続けた少女の姿を描く
脳腫瘍と闘いながら漫画を描き続けた少女の姿を描く

4位の『春の香り』は、脳腫瘍に苦しみながらも最後まで漫画家を目指した坂本春香の姿を綴る「春の香り 脳腫瘍と闘い、十八歳で逝ってしまった最愛の娘へ」を原作に、『メイド・イン・ヘヴン』(20)などの丹野雅仁監督がフィクションとして撮った青春ムービー。悪性脳腫瘍の再発に伴う手術の影響で右手が麻痺し、理由を告げずに恋人のタクミと別れ、漫画を描くこともやめてしまうハルカ。そんな彼女がなぜ、再びペンを持つようになるのか?その終盤の展開は涙なくしては観られない。

オーディションで約1000人のなかから選ばれた主演の美咲姫、タクミに扮した男性アイドルグループ「IMP.」の佐藤新の繊細な演技にも心揺さぶられる。最後まで前向きに生きたハルカの輝きが、同年代を中心にじわじわ浸透した結果がこの順位には表れている。

続いて、今週末に公開予定のミニシアター映画をピックアップ!3月20日(木・祝)から定年退職した男が1本の電話をきっかけにスパイに仕立て上げられ、違法の潜入捜査をすることになる驚愕の実話を映画化した『ジェリーの災難』が公開。実際の事件の被害者ジェリー・シューが自ら脚本と主演を務めた本作は、嘘みたいな本当のエピソードがリアル&サスペンスフルに描かれているというから楽しみだ。
翌3月21日(金)には、2014年に惜しまれながら閉館した映画館、吉祥寺バウスシアターをめぐる90年におよぶ家族の姿を描く『BAUS 映画から船出した映画館』も登場!染谷将太、「銀杏BOYZ」の峯田和伸、夏帆が共演した本作も、映画ファンなら見逃すわけにはいかないだろう。

実際の事件の被害者が脚本と主演を務めた『ジェリーの災難』 
実際の事件の被害者が脚本と主演を務めた『ジェリーの災難』 

定年退職した69歳のジェリーにかかってきた1本の電話。彼は、それを機に“スパイ”として潜入捜査に従事することに――。そんな実際に起きた信じがたい事件の当事者・ジェリーがこなした“おとり捜査”などの激レア体験を、彼自身が脚本を書き、主演俳優として出演、リアルかつサスペンスフルな映画として完成させた。

前代未聞、異色ずくめの実話映画『ジェリーの災難』は、スラムダンス映画祭やサンタバーバラ国際映画祭など40もの世界映画祭で多くの賞にノミネートされ、最優秀主演男優賞を含む受賞歴を獲得。まさに“どこにでもいる平凡な男”だったジェリーが憧れてきたアメリカンドリームを実現させた作品にもなった。

公開規模は小さいものの、映画ファンに愛されて続け話題性の高い良質な映画作品を鑑賞できるミニシアターに足を運んでみてはいかがだろうか。ちなみに、現在全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」では、クラウドファンディングやキャンペーンなどミニシアターを支援する様々な取り組みを実施中!作品を楽しむだけでなく、支援するという方法でミニシアターに触れてみてほしい。


文/イソガイマサト

●全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」
詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/

ミニシアター支援プロジェクトに関するお問い合わせ:全興連ミニシアター支援事業運営事務局(株式会社ムービーウォーカー内)minitheater@moviewalker.co.jp

関連作品