【ミニシアターランキング】人気アニメ・シリーズの最新作『親鸞 人生の目的』が先週の5位から堂々の1位にジャンプアップ! 3月7日~3月9日の成績を紹介
3月7日から3月9日までのミニシアターランキング(公開30館以下スタートの作品が対象)が興行通信社から発表された。先週1位に輝いた押井守監督のSFアニメ『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 4Kリマスター版』(公開中)が3位に後退するも、その続編『イノセンス 4Kリマスター版』(公開中)は先週と同じ2位の座をキープする大健闘!相変わらずの人気ぶりを印象づけたが、その2作を軽々と飛び越え、“人はやがて死ぬのに、なぜ生きるのか?”の答えを求めて旅をする浄土真宗の宗祖・親鸞の若き日を描いた『親鸞 人生の目的』(公開中)が先週の5位から1位に駆け上がったのが今週の最も大きなトピックだろう。政治も私たちの日常も混沌とし、生きづらくなる一方の現在だけに、親鸞の教えに耳を傾け、生きるヒントをもらいたいと思っている人たちが増えているのかもしれない。そして、先週の最後に少しだけ紹介した注目の2作『ケナは韓国が嫌いで』(公開中)と『Playground/校庭』(公開中)が4位と5位にランクインする理想的な結果に。それぞれの公開を待ち望んでいたアンテナの鋭い映画ファンたちが、しっかり劇場に足を運んだ結果がこの順位には表れているような気がする。
【ミニシアターランキングトップ5】(3月7日~3月9日)
1位『親鸞 人生の目的』(先週5位↑)
2位『イノセンス 4Kリマスター版』(先週2位→)
3位『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 4Kリマスター版』(先週1位↓)
4位『ケナは韓国が嫌いで』(NEW)
5位『Playground/校庭』(NEW)
1位になった『親鸞 人生の目的』は、9歳で天台宗・比叡山の僧侶となった19歳の親鸞が、“女性に恋をしてはならない”という教えのもとにありながら、関白である九条兼実の娘・玉日姫との恋に苦悩する姿を描いたもの。人生の師・法然上人からその煩悩を解き放つ術を学んだ彼が、再会した玉日姫に対してどんな行動を起こすのか?TVアニメ「ウルヴァリン」などの青山弘監督による鮮烈な映像と青春ムービーとしての色合いも幅広い層の多くの観客の動員につながったに違いない。
4位の『ケナは韓国が嫌いで』は、韓国の小説家チャン・ガンミョンのベストセラー小説「韓国が嫌いで」を原作に、「第2のホン・サンス」「韓国の是枝裕和」と言われる俊英チャン・ゴンジェ監督がいまの韓国の若者たちが直面している厳しい現実を描きだした力作だ。ソウル郊外の小さな団地で両親と妹と暮らす28歳のケナは、大学を卒業後、金融会社に就職し、毎日片道2時間かけてソウル市内の会社に通勤している。恋人はいるものの、「外国で暮らしたい」という彼女の意見に耳を貸さない彼に最近は苛立ちを覚え、老朽化が進む団地から転居する費用を自分に頼ろうとする母親にもうんざりしていたケナ。このままでは幸せにならないと思った彼女は、ついにニュージランドへの移住を決意して…。地獄のような長時間通勤、恋人との不透明な未来、古い価値観を押しつけてくる家族との息が詰まるような日々…。ここで描かれるのは、都会で生きる日本の若者たちの現実となんら変わらない。チャン・ゴンジェ監督が綿密な取材を重ね、9年の歳月をかけて完成させた本作は、ヒロインのケナを演じたコ・アソン(『グエムル 漢江の怪物』)の生々しい芝居で他人事ではない様々な問題を突きつけてくる。SNSでは早くも「日本社会にも通じる」「ケナの気持ちが痛いほどわかる」といったコメントが続出!共感のコメントが広がりを見せているので、さらなるランクアップも期待できそうだ。
5位の『Playground/校庭』は、小学校に入学したばかりの少女の視点で、不安と恐怖に満ちた子どもたちの世界を没入感たっぷりに映しだした衝撃のベルギー映画。7歳のノラは3つ年上の兄アベルが通う小学校に入学するが、内気で人見知りの性格ということもあって、校内に居場所がない。見知らぬ子どもたちが叫び声を上げ、無闇に走りまわっている学校はカオスそのものだった。しかも大好きなアベルがいじめられている現場を目撃するが、兄は「誰にも言うな!」と言い、その後もイジメは繰り返される。一方的にやられっ放しのアベルの気持ちが理解できないノラは、寂しさと苦しみをどんどん募らせていって…。子どもにとっては、初めての“社会”となる学校。そこで彼らはどのように他人との関係を築き、サバイブし、集団生活に馴染んでいくのか?大人が知り得ない子どもたちの過酷な現実にメスを入れたローラ・ワンデル監督は本作で長編デビューを飾り、第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で国際批評家連盟賞やロンドン映画祭で新人監督賞を受賞。鋭いタッチと驚愕のラスト、「すごいものを観た。それに尽きる」といった映画監督・森達也氏のコメントも話題に。子どもを持つ親や小学校に対して苦い思い出がある人たちは特に無視できない内容だけに、それらの相乗効果が確実な動員に繋がったのではないだろうか?
続いて、今週末に公開予定のミニシアター映画をピックアップ!3月14日(金)から戦後のローマで逞しく生きると女性たちを力強く描いた『ドマーニ! 愛のことづて』が公開。コメディアンで俳優のパオラ・コルテッレージが初監督し、自ら主演を務めた本作は『バービー』(23)、『オッペンハイマー』(23)を押さえて、2023年のイタリア国内興行収入ランキングNo.1大ヒットを記録した話題作とあって、多くの女性に支持されそう。同日には『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』も登場!本作は3年生の物憂げな少女の目線と感覚で、アメリカの闇と多様な文化を夢のような映像で描いた現代のおとぎ話。映画ファンが好きそうな題材だけに、こちらも次回のランキングに大きな影響を与えそうだ。
公開規模は小さいものの、映画ファンに愛されて続け話題性の高い良質な映画作品を鑑賞できるミニシアターに足を運んでみてはいかがだろうか。ちなみに、現在全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」では、クラウドファンディングやキャンペーンなどミニシアターを支援する様々な取り組みを実施中!作品を楽しむだけでなく、支援するという方法でミニシアターに触れてみてほしい。
文/イソガイマサト
詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/
ミニシアター支援プロジェクトに関するお問い合わせ:全興連ミニシアター支援事業運営事務局(株式会社ムービーウォーカー内)minitheater@moviewalker.co.jp