第3弾は『ムーンライト』!A24制作×ハピネットファントム・スタジオ作品の特別上映作品決定
ニューヨークを拠点とする独立系スタジオA24とパートナーシップ契約を締結したハピネットファントム・スタジオ。いよいよ本体制が本格始動し始めた2025年、TOHOシネマズの劇場にて、A24制作×ハピネットファントム・スタジオ作品の4か月連続となる特別上映を実施している。毎月24日に行われるこの企画だが、第3弾となる3月24日(月)は『ムーンライト』(16)の上映が決定した。
第89回アカデミー賞授賞式で起きたハプニングと言えば、有力視されていた『ラ・ラ・ランド』(16)が作品賞受賞として発表された後に、プレゼンターに手渡された封筒が間違っていたことが判明、『ムーンライト』の受賞に訂正されたという出来事だろう。監督のバリー・ジェンキンスは、その時のことを「これほどまでに劇的に自分の人生を変えた数十分は無いのではないか」と語っている。
いまや『ライオン・キング ムファサ』(公開中)など大作のメガホンをとるようになったジェンキンスだが、当時は長編2作目、本作の製作費はわずか150万ドルと、その年のオスカー作品部門に候補入りしたなかでは最も低かった。『ムーンライト』の受賞を歴史的快挙とする所以には、LGBTQのラブストーリーがアカデミー史上初の作品賞を受賞し、マハーシャラ・アリが黒人俳優として12年ぶり、イスラム教徒として史上初の受賞を果たしたことが挙げられる。
『ムーンライト』では、孤独を抱えながらも自分の居場所を探し続ける主人公シャロンの姿が、3つの時代に分けて描かれる。幼少期、少年期、青年期。血の繋がりを超えた結びつきや、親友へ芽生えた一途な恋心を感じながら、アイデンティティーに悩み、自分の心の痛みに向き合って大人へと成長していくシャロン。3人の役者の繊細な演技で紡いでいく時間に、タイム誌は「2016年の映画でも最も印象に残った演技1位」と太鼓判を押した。
ブラッド・ピット率いる制作会社「プランBエンターテインメント」と共同で開発した本作は、それまで映画配給をメインに行ってきたA24にとって初めて製作を手掛けた作品でもある。アカデミー賞だけでなく、A24の歴史をも大きく進歩させた『ムーンライト』。そしてその日本配給を担ったファントム・フィルム(現ハピネットファントム・スタジオ)。すべてはここから始まったと言っても過言ではないだろう。
3月24日のTOHOシネマズ 日比谷でのアフタートークでは、2018年のトロント映画祭のプレミア上映で本作に出会い衝撃と感銘を受けたハピネットファントム・スタジオ代表の小西啓介が登壇。いかにしてA24サイドと交渉し日本配給するに至ったのか、いまだからこそ明かされる買い付けの裏話を披露する。さらに、映画ジャーナリストの立田敦子を交えて、第89回アカデミー賞授賞式での『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』の作品賞発表取り違えプニングの真相や本作の魅力を語る。また、来場者には両劇場で特製ステッカーをプレゼント予定だ。
これからのA24×ハピネットファントム・スタジオの新作には、『ベイビーガール』が3月28日(金)より、『異端者の家』が4月25日(金)より全国公開を控えている。また、“終わり”を告げる鳥と、ある母娘が織りなす奇想天外にして心温まる物語『終わりの鳥』も4月4日(金)より公開予定だ。バラエティ豊かな新作の続報にも是非期待してほしい。
文/山崎伸子