フランスの名匠ジャック・オディアールが挑んだ新境地!『エミリア・ペレス』の誕生秘話を独占入手

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フランスの名匠ジャック・オディアールが挑んだ新境地!『エミリア・ペレス』の誕生秘話を独占入手

第77回カンヌ国際映画祭で女優賞と審査員賞のダブル受賞を果たし、第82回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ミュージカル/コメディ部門)をはじめ4部門を受賞。第97回アカデミー賞では、非英語作品としては歴代最多となる12部門13ノミネートを果たし、助演女優賞と歌曲賞に輝いた『エミリア・ペレス』(3月28日公開)。本作はいかにして生みだされたのか、その誕生秘話をMOVIE WALKER PRESSが独占入手した。

弁護士のリタ(ゾーイ・サルダナ)は、メキシコの麻薬王マニタス(カルロ・ソフィア・ガスコン)から「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、イギリスに移住して新生活を送るリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリア・ペレスだった。

本作でメガホンをとったのはフランスのジャック・オディアール監督。『ディーパンの闘い』(15)でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝き、『ゴールデン・リバー』(18)で初の英語劇に挑みヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。デビューから本作まで手掛けた長編映画10本のうち、4本でフランスのアカデミー賞として知られるセザール賞の監督賞を受賞している名匠のなかの名匠だ。

そんなオディアール監督が6年前、ボリス・ラゾンの小説「Ecoute」を読んだことが本作のはじまりだったという。同作の中盤に登場する、性別適合手術を望むトランスジェンダーの麻薬の売人に興味をもったオディアール監督。しかし作中で充分に掘り下げられておらず、「この人物の物語をいちから描きたい」と考え、『エミリア・ペレス』の構想が生まれることに。

『エミリア・ペレス』は3月28日(金)より公開
『エミリア・ペレス』は3月28日(金)より公開[c] 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS - FRANCE 2 CINEMACOPYRIGHT PHOTO : [c] Shanna Besson

最初の脚本執筆は、2020年のロックダウン中に行われた。自ら脚本も務めたオディアール監督は、書き進めていくうちに、映画脚本というよりもオペラのリブレットに近い構成であることに気がついたという。幕ごとに分けられ、登場人物は典型的なキャラクターとして描かれており、より劇的な表現が求められる作品になっている。過去にヴェリズモ・オペラ(写実的なオペラ)を構想したことのあるオディアール監督は、その流れを本作に反映させて行ったのだとか。

そしてプロデューサーの友人から紹介されたクレモン・デュコルと会い、音楽制作を依頼。さらに作詞家としてフランスの国民的シンガーであるカミーユも加わり、脚本家のトマ・ビデガンを含む4人でパリ郊外の家にこもって製作を進めていく。原作では男性だった弁護士を女性に変更するなど、「Ecoute」の設定に改変を加えながら作品を進化させていったという。

【写真を見る】第97回アカデミー賞で2部門を受賞!ゾーイ・サルダナ演じる弁護士の設定が変更された理由とは…
【写真を見る】第97回アカデミー賞で2部門を受賞!ゾーイ・サルダナ演じる弁護士の設定が変更された理由とは…[c]A.M.P.A.S.

その結果、フィルムノワールやメロドラマ、ミュージカルなどあらゆるジャンルの垣根を超えた、オディアール監督のフィルモグラフィのなかでも異色のエンタテインメント作品となった本作。オディアール監督の卓越したストーリーテリングの手腕と音楽表現、そしてアカデミー賞を受賞したゾーイ・サルダナをはじめとしたキャスト陣の熱演。それぞれがもたらす抜群の化学反応を、劇場のスクリーンで堪能してほしい。


文/久保田 和馬

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