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今週のイチ押し
2016年4月18日更新
今こそ観てほしい、名作の中の「純粋」
名作映画というのは、最初に観たそのときの自分を思い起こさせる。何歳で、誰と、そしてどのシーンでどう感情が動いたのか…などなど。『ニュー・シネマ・パラダイス』は1989年日本公開された。さほど大きくないシネスイッチ銀座は平日でも激混みで、シチリアの教区映画館パラダイス座さながら、銀座の観客も、笑って湧いてそして哀しんで。ラストシーン、成長したトトと一緒に、スクリーンに映し出される粗くつなげられた古いフィルムに大泣きもした。
今作が公開25周年を機にデジタル・レストア版で甦った。それも、日本で最初に公開されたインターナショナル版(124分)と、ジュゼッペ・トルナトーレ監督がヨーロッパ映画祭に向け編集した完全オリジナル版(174分=初ブルーレイ化。監督の音声解説付き)の2バージョン。
「実在した人々の記憶が基になっているから、今作は自伝的映画だった」と監督は言う。故郷の映写技師とその教会牧師の実話をきっかけに脚本を書き、そして映画技師アルフレードには尊敬の念を抱く自らの祖父の要素と、映画館そのものを投影しているのだと言う。ゆえにアルフレードは、今作で映画館の取り壊しを見届けられないのだ。
風鈴や「カット」を指示する牧師のベル、駅のホームの発車音、教会の鐘…と場面は何度も「ベルの音」でシーンの変化や登場人物の心情が表わされている。今なら、多少うがった観方をして監督の意図する映像と音の演出が分かる、ような気がする。そしてそれは音声解説で明かされていたりもする。
でも、今作で一番重要なのは25年を経ても、最初の感動が色褪せていないことにある。「当時より今の方が感動的に思える。(略)あの映画のパワーは『純粋さ』にあるんじゃないかな」そう言う撮影監督のブラスコ・ジェラートに共感。技術が進化して、「これどう撮ったの?」という素朴な疑問も抱かなくなり、劇場もデジタル上映だ4Kだと進化を重ね、それはそれですてきなコトなのかもしれないけれど、最近の映画を観た後の何か物足りない感じは受け手=つまりは自分の「純粋さ」に理由があったのだ。「映画館は成長の場だった。そこで愛が生まれたり、ビジネスや世を知る場だった」と言う監督の思いが詰まった、『ニュー・シネマ・パラダイス』を2016年の今、もう一度観ておいてよかった、そう思った。
『ニュー・シネマ・パラダイス』インターナショナル版&完全オリジナル版 デジタル・レストア・バージョン ブルーレイ BOX
4月6日発売
監督・脚本・出演/ジュゼッペ・トルナトーレ
製作総指揮/ブラスコ・ジェラート
出演/フィリップ・ノアレ ジャック・ペラン サルヴァトーレ・ディ・カシオ マルコ・レオナルディ
ブルーレイ●6500円※単品セル2作品(各3800円)あり
発売元/アスミック・エース 販売元/KADOKAWA
[c]Everett Collection/AFLO

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