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J・キャメロンのイマジネーションの原点が垣間見えるドキュメンタリー

深海を潜ることは潜在意識に入るのと同じ。奥深い場所ほど待ち受ける怪物も大きい―とジェームズ・キャメロンは言う。1960年、トリエステ号によるマリアナ海溝調査の偉業をテレビで知った幼いキャメロンは“with my own eyes”で深海の生命の奇跡を見ることを生涯の目標とする。

やがてその情熱が『アビス』(89)を生み、97年には実物のタイタニック号を見るために潜水艇に乗り込み「沈没船は伝説でなく悲劇だった」と悟り、「ハリウッドで映画を作るアルバイトをしながら探検家になろう」とジョークを飛ばすほど深海への思いを深めていく。

今作はキャメロン率いる深海探査チームによる、最新鋭深海艇“ディープシー・チャレンジャー号”開発からの7年間を追っている。深海で艇の窓にひびが入ったり、油圧系のトラブルがあったりとさまざまなトラブルに見舞われるキャメロン。スタッフの事故死という悲劇に直面し、リスクを冒す価値がこの挑戦にあるのかという自問自答。そしてまた立ち上がり、挑戦を続けるという彼のひたむきさに感銘を受ける。

美しく漂うタコやクラゲ、花のようなイソギンチャク、得体の知れない謎の生物などの深海の映像をとらえつつ、ついにトリエステ号の記録＝水深1万910メートルに到達したキャメロンが目の当たりにするのは、不思議なほど穏やかで静かな海底の姿だった。

キャメロンとそのチームの飽くなき挑戦に圧倒されつつ、ヒットメーカーのイマジネーションの原点が分かるドキュメンタリー作品だ。