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今週のイチ押し
2015年8月10日更新
心まで満たされる!人情&食ドラマの劇場版
都会の路地裏にある小さな食堂、めしやで繰り広げられる客たちの人生模様を描いた安倍夜郎のコミックを実写化し、3期まで製作されたテレビシリーズの劇場版。監督は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07)の松岡錠司。マスター役の小林薫ほかテレビ版キャストに加え、今作では高岡早紀、多部未華子、筒井道隆が各エピソードの客として来店する。めしやに置き去りにされた骨壺に隠された切ないエピソードが明かされるほか、テレビ版では知り得なかったマスターの私生活が垣間見られるのも劇場版の「隠し味」になっている。
ある夜来店したのは、愛人を亡くし遺産も手に入らず荒れていたたまこ(高岡)。マスター(小林)がふるまった「ナポリタン」をきっかけに、たまこははじめ(柄本時生)と意気投合し同棲を開始。だが、遺産が入ることになるとあっさりとはじめに別れを切り出すのだった。また別の夜、人に騙されて明日への希望が持てないみちる(多部)も暖簾をくぐり、ひょんなことからめしやを手伝うことに。そして大震災で妻を亡くした謙三(筒井)はボランティアのあけみ(菊池亜希子)が作るカレーの味が忘れられずに上京し、めしやを訪れる。
マスターが3人の客に出す「ナポリタン」「とろろご飯」「カレーライス」…。一見普通の素朴なメニューを、その客にとっての特別な味に仕上げているのは、マスターの「情」という調味料。その思いをしっかりと伝えるべく、手元をアップした調理風景の映像表現が今作の素晴らしさでもある。たとえば卵焼きを流し込むときの「ジュッ」という音、懐かしい赤いウインナーに切り込みを入れてタコになるまで…材料が特別なメニューになるまでの丁寧な作業がしっかりと映し出されている。
夜の雑踏を抜けた暗い道にぽっと灯る提灯や電飾看板がどこか懐かしく温かい。その先にあるめしやのうまい料理とマスターの心遣いに癒される。それぞれ悩みを抱える3人の客たち同様、前に進む活力をもらえそうな気持ちになる作品だ。
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