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目にも心にも「おいしい」映画を召し上がれ！

味つけもノリも全然違う新興インド料理店と老舗フレンチ店。頑固な仏印オーナー同士の対立、舌戦、イヤがらせ対決…。そしてその後の奇跡の異文化融合が描かれる。監督は『ギルバート・グレイプ』(93)『ショコラ』(00)のラッセ・ハルストレムだ。

政変でインドを追われ、南仏にレストランを開いたインド人のカダム一家。その真向いにはマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)の格調高いフレンチ店があった。やたらとうるさいインド音楽やら、ハデな衣装、強引な客引き、漂ってくるスパイスの匂い、とにかくお向かいのインド料理店の何もかもが気に入らないマロリー。町中を巻き込む仏印バトルに発展するが、やがてインド店の次男ハッサン(マニッシュ・ダヤル)の料理センスを見抜いたマロリーが、彼にフランス料理の修行をさせたことから2軒の交流が生まれていく。

まず見どころは2軒の対比。にぎにぎしくド派手なインド料理店と静謐で品格重視のフレンチ店。外観から内装から、衣装の色や小物まで、対比の描写は細部にわたり、これでは融合を見ることはできないか？と思わせるのだ。料理の一皿一皿も、インド料理は鮮やかで刺激的だし、フレンチは繊細で絵画のよう。それらが目にも「おいしく」、気づけばお腹がすいてくる。

そして一番の味付けはハレストレム監督による人間描写。気位の高いマロリーも、頑固なインド人のパパも、表情やしぐさのひとつひとつがとても魅力的で生きるエネルギーに満ちている。どうして監督はここまで人間を優しく見つめ豊かに描けるのだろう。

ラストの「奇跡」はまさに、仏印のフュージョン料理！　お腹も心も満たされる、やっぱり「おいしい」映画です。