『ドールハウス』矢口史靖監督に “Jホラーの申し子”がインタビュー!「観客が能動的に怖がってくれるような“共犯関係”を作れたら」

『ドールハウス』矢口史靖監督に “Jホラーの申し子”がインタビュー!「観客が能動的に怖がってくれるような“共犯関係”を作れたら」

今年6月に公開され、興行収入18億円を超えるヒットを記録した長澤まさみ主演の“ドールミステリー”『ドールハウス』(25)のBlu-ray、DVDが発売中だ。ホラーの要素がふんだんに詰め込まれた本作の監督、脚本を手掛けたのは『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)の名匠、矢口史靖監督。

PRESS HORRORではパッケージの発売に合わせ、矢口監督に独占インタビューを敢行。今年1月に『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(25)で商業映画監督デビューを果たした、“Jホラーの申し子”近藤亮太監督が聞き手を務め、コメディ演出に定評のある矢口監督がホラー的恐怖をどう描いたのか、演出家目線で迫った。

5歳の娘を不慮の事故で亡くし、悲しみに暮れる鈴木佳恵(長澤)と夫の忠彦(瀬戸康史)。佳恵は骨董市で見つけた娘によく似た愛らしい人形を“アヤ”と呼んでかわいがり、元気を取り戻してゆく。佳恵と忠彦の間に次女の真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなるが、5歳に成長した真衣が人形と遊ぶようになると、一家に恐ろしい出来事が次々と起き始める。夫妻は人形の“アヤ”に隠された秘密に迫っていくが…。

「かわいそうとおかしいが共存する。多分僕の映画は全部そうなんだと思います」

――今回、『ドールハウス』は矢口監督にとって長編では初のホラー映画になりますね。印象的な恐怖描写やアイデアの数々がすばらしかったですが、以前から温めていたネタなどがあったのでしょうか。

「ほとんどは新しく考えたものです。自分の自主映画『ワンピース』のシリーズで用いた“一人増えているのに気づかない”というネタと、テレビドラマ版『学校の怪談』でも使った“暗闇の中でフラッシュに一瞬だけ幽霊が見える”という描写ぐらいですかね。それ以外は全部、今回のストーリーに合わせてイチから作りました。シナリオを頭から順番に追いながら、展開ごとに、こう見せたら怖いなと考えていった感じです」

【写真を見る】亡くなった娘に似ている愛らしい人形が一転、家族を翻弄してゆくさまをスリリングに描いた映画『ドールハウス』
【写真を見る】亡くなった娘に似ている愛らしい人形が一転、家族を翻弄してゆくさまをスリリングに描いた映画『ドールハウス』[c]2025 TOHO CO., LTD.

――物語をキャラクターと一緒に進んでいきながら構築していくわけですね。

「そうです。特定のシーンやショットから発想することは、過去の作品でもほとんどありません。登場人物たちが行動し、その結果として起こる次の出来事について考える。そういう連鎖のなかで自然に怖さを積み上げていきました」

――監督の作品はコメディの印象も強いですが、ホラーを撮る際と意識の違いはありましたか?

「実は、自分のなかでは区別していないんですよ。『ドールハウス』も“笑わせよう”と思って撮ってはいないのに、海外の映画祭では大爆笑が起きていたんです。怖いシーンと笑いの波が交互にくる。でも僕としては全部シリアスなつもりです。例えば『ウォーターボーイズ』で最初の演技披露が失敗するシーンも主人公にとっては悲劇ですし、『こんちくしょう』と思っているわけなんです。ただ僕が撮ると悲劇がどこかおかしく見えて、観客は笑ってしまう。かわいそうとおかしいが共存する。『スウィングガールズ』でもそういったシーンがありましたし、多分僕の映画は全部そうなんだと思います」

「“映っているものが怖い”というより、“物語を追うなかで怖さが生まれる”ことを大事にしました」

――監督はご自身で絵を描かれる印象がありますが、コンテはどのように作られるんでしょうか。

「僕にとって絵を描くことは“映像の設計図”を作る作業です。映画の画をこの通りにしたいということではなく、撮影のための共有ツール。大体、撮影当日の朝に描きます。ロケがほとんどなので、天気やロケ地が予定と変わってしまうことは日常茶飯事なんです。前もって描いたコンテが無駄になることも多いので、撮影当時の朝早く起きて描いてメールでスタッフに送る。そういうやり方ですね。セット撮影や特殊効果のある場面――本作でいえばクライマックスの“神無島”などは事前に描いて準備しました」

5歳の娘を失い哀しみに暮れていた佳恵は、骨董市で人形の“アヤ”と出会い元気を取り戻していくが…?
5歳の娘を失い哀しみに暮れていた佳恵は、骨董市で人形の“アヤ”と出会い元気を取り戻していくが…?[c]2025 TOHO CO., LTD.


――『ドールハウス』はジャンプスケアよりも、じっとりとした不穏さが印象的でした。恐怖描写を演出されるうえで意識されたことは?

「“映っているものが怖い”というより、“物語を追うなかで怖さが生まれる”ことを大事にしました。映画の前半では、実際の恐ろしい出来事はほとんど画に映らない。編集の順番やストーリーの流れのなかで、『こんなことが起きたら怖い』と感じてもらう構成です。スプラッターやゴアなどの残酷描写は一切使わず、観客が能動的に怖がってくれるような“共犯関係”を作れたらおもしろいと思っていました」

――ご自身が好きなホラーも、そうした心理的な怖さのものですか?

「若い頃は、当時全盛のスプラッター映画が好きでしたが、年を重ねるとああいう油っこいものがちょっと重たくなって(笑)。最近は人間の怖さ――いわゆる“ヒトコワ”のほうがゾッとしますね」

『ドールハウス』Blu-ray&DVD 発売中

Blu-ray豪華版
価格:8,250 円(税抜価格:7,500 円)
本編110分+映像特典199分/2層(BD50G)/ビスタサイズ/音声:①日本語 5.1ch DTS-HD Master Audio②日本語2.0ch DTS-HD Master Audio③バリアフリー日本語音声ガイド 2.0ch DTS-HD Master Audio/字幕:バリアフリー日本語字幕
特典ディスク:メイキング/矢口監督に聞く!『ドールハウス』の秘密/イベント映像集(第45回ポルト国際映画祭凱旋報告会/ジャパンプレミア/初日舞台挨拶/大ヒット感謝御礼舞台挨拶)/海外映画祭映像(第45回ポルト国際映画祭/第49回香港国際映画祭/第27回ウディネ・ファースト映画祭/第27回上海国際映画祭)/アヤちゃん映像集/SNS宣伝動画/主題歌PV/TIFFCOM予告/バンパー映像集/生き人形は実在する/デザイン画&絵コンテ(静止画)
発売・販売元:東宝

DVD通常版
価格:4,400円(税抜価格:4,000円)
本編110分+映像特典5分/片面2層/ビスタサイズ/音声:①日本語 5.1ch ドルビーデジタル②日本語 2.0ch ドルビーデジタル③バリアフリー日本語音声ガイド 2.0ch ドルビーデジタル/字幕:バリアフリー日本語字幕
発売・販売元:東宝

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