不気味な人形、双子、盲目の霊媒師…多彩な要素をごった煮にしたホラー『視える』の恐怖の源泉をたどる
見えないけれど視える…“盲目”の“霊媒師”
妹ダーシーの“盲目”という設定もポイントの一つ。例えば、優れた聴覚を武器に目の不自由な老爺が強盗を撃退する『ドント・ブリーズ』(16)のように、盲目である代わりにほかの感覚が鋭いという作品はこれまで数多く作られてきた。
本作のダーシーは遺留品を通じて見えないはずのものを視る、優れた第六感を持っている。この“盲目”と“霊視”というセットは定番で、盲目だった女性が角膜手術を受けたことで霊が視えるようになってしまう香港=タイ合作の『The Eye/アイ』(02)など、数々のホラーで描かれてきた。
なかでも本作に影響を与えていると考えられるのが、マッカーシー監督がインタビューでも名前を出しているニコラス・ローグ監督の『赤い影』(73)だ。盲目の霊能者の女性が登場し、目の見える姉がいることも『視える』と共通している。
つながりながら事件の真相に迫る“双子”パワー
さらに“双子”というポイントも『視える』を構成する要素の一つ。死の謎に迫るため、姉から残された最後の伝言を聞き、姉との写真を眺めて力を高めるなど、亡き姉ダニーに想いを馳せながらダーシーは事件の暗部へと足を踏み入れていく。
この双子要素に加え、盲目という点でも似ているのが、ギレルモ・デル・トロがプロデュースしたスペイン産ホラー『ロスト・アイズ』(10)。角膜移植手術を終えたばかりの女性が、自宅の地下室で首を吊った死体として発見され、双子の妹がその謎に迫っていくうち少しずつ視力を失っていくという点など共通点が多い。敬愛する存在としてデル・トロを挙げているマッカーシー監督だけに、インスピレーションを受けていても不思議ではない。
突然のスラッシャー!浮かび上がる不気味な“仮面”の男
事件の真相に近づくにつれて徐々に浮かび上がるのが“仮面”をした謎の男の存在。この男によってダニーが惨たらしく殺されたことが、ダーシーの霊視によって判明する。死の謎に迫るこの回想シーンは、数々のマスク男が活躍してきたスラッシャーホラーを彷彿とさせ、ゴシックな雰囲気のなかでも異彩を放つ。
マッカーシー監督は、両親がビデオショップを経営していたため、幼い頃から80年代の作品を中心に多くのホラーを観て育ってきた。本作を作るうえでも『13日の金曜日』(80)や『ハロウィン』(78)といったスラッシャームービーを改めて観直したそうだ。
このほかにも影響を受けた作品として、中田秀夫監督の『リング』(98)やフォークホラーの傑作『ウィッカーマン』(73)などを挙げているように、多彩なジャンルのテイストがミックスされている『視える』。じとーっとした雰囲気からジャンプスケア描写まで、ジャンルのよさを積み上げることで生まれる新鮮な恐怖をぜひ劇場で味わってほしい。
文/サンクレイオ翼

