「スター・ウォーズ:ビジョンズ」配信直前イベントに監督9名&浪川大輔ら声優3名が登壇!各作品の見どころを熱弁
世界的評価の高いアニメーションスタジオが、クリエイター独自の視点と発想で新たな「スター・ウォーズ」を描く、ルーカスフィルムの人気プロジェクト「スター・ウォーズ:ビジョンズ」Volume3がディズニープラスにて独占配信中。10月28日には、各エピソードを手掛けた日本のアニメ界を代表する監督たち9名が一堂に会した配信直前イベントが開催された。
登壇したのは、「神風動画」の水野貴信監督、「Production I.G」の塩谷直義監督、「キネマシトラス」の垪和等監督、橘正紀監督、「TRIGGER」の大塚雅彦監督、「WIT STUDIO」の山元隼一監督、「プロジェクトスタジオQ」の小林浩康監督、「ポリゴン・ピクチュアズ」の吉平"Tady"直弘監督、「デイヴィッドプロダクション」の大平晋也監督ら。
さらに会場には、本作でオリジナル版声優を務めた声優の浪川大輔(「The Duel: Payback」/グランド・マスター役)、ファイルーズあい(「The Bounty Hunters」/セブン役)、黒沢ともよ(「極楽鳥の花」/ナキメ役)、そして「スター・ウォーズ」の物語には欠かせないキャラクター、ストームトルーパーも駆け付け、「スター・ウォーズ」への愛をもって取り組んだ各作品の制作秘話や作品に隠された「スター・ウォーズ」のオマージュやトリビアなどを語り尽くし、「スター・ウォーズ」と日本文化が融合した本作だからこその熱い想いにあふれたイベントとなった。
「The Duel: Payback」は神風動画とCGスタジオのANIMAと共同制作作品。Volume1で第49回アニー賞(一般向けテレビ/メディア部門)および第74回エミー賞(ショートアニメーション部門)にノミネートされるなど、世界的に高い評価を獲得した「The Duel」の続編として登場する。
主人公は赤いライトセーバーを腰に携え旅を続けるローニンで、「スター・ウォーズ」に多大な影響を与えた黒澤明映画のような雰囲気が漂う、まさに「スター・ウォーズ」と日本文化が融合した1作だ。前作「The Duel」から続投して本作を手掛ける水野監督は、シスを彷彿とさせるような黒いローブに身を包んで登場し、「前作は初めての『ビジョンズ』シリーズでしたので、『スター・ウォーズ』に影響を与えた黒澤映画の要素を強くしたり、コンセプトを全面に押し出そうと思って作りました。今回は前作を踏襲しつつ『スター・ウォーズ』らしいアクション性やユーモアをボリュームアップさせて作りました」と続編だからこそのチャレンジについて明かした。
そんな本作から新たに登場する、復讐に憑りつかれたジェダイのグランド・マスターのオリジナル版声優を務めるのは、『スター・ウォーズ/クローンの攻撃(エピソード2)』(02)以来アナキン・スカイウォーカーを演じる浪川。本プロジェクトについて、「第1弾の時にCMのナレーションをしていて、すごいことが始まるなと思っていました。自分は出ていないな、アナキンを演じているからかなと思っていたんですけど、やっと出られて感無量です!」と長年「スター・ウォーズ」に携わってきたからこその熱い想いを告白。
そんな浪川の起用について水野監督は「音響監督さんから何名か候補をいただいて、有名な方ももちろんいらっしゃいますけど、そういうのは一旦置いておいて、グランド・マスターの絵をずっと見ながらサンプルボイスを聞いて想像するんです。浪川さんの声を聞いた時に『これだ!』と思って。アナキンをされていることもわかっていたんですけど、この声しかいないと思ってお願いしました」とコメント。
浪川は「うれしいです。今日来てよかったです。声や雰囲気で決めていただいたなんて、それは本当に声優冥利に尽きます」と喜びを爆発させ「バランス感が難しい作品なので指示いただきながら何テイクもやりました。今日、完成版を観させていただいたんですが、こんなふうになるんだというのは衝撃でした。良い意味でものすごく興奮しました」とうれしそうに語った。
そんな本作には“日本”にまつわる隠しネタがあるそうで、水野監督は「物語の始めに惑星の名前が出てくるんですが、日本海側のどこかの地名のアナグラムになっています。地図を観ながら探してみてください」と、「スター・ウォーズ」ファンにアピール。
「The Ninth Jedi:Child of Hope」はProduction I.Gが制作する、Volume1で人気を博した神山健治監督作「九人目のジェダイ」の続編。強いフォースを秘めた鍛冶屋の娘カーラが繰り広げる銀河の危険な冒険のなかで、「スター・ウォーズ」伝統の“親子”の物語をライトセーバーアクション満載で描きだす。
来年2026年には「ビジョンズ」シリーズで初めてシリーズ化され、神山が総監督を務めるオリジナルアニメーションシリーズ「Star Wars Visions Presents -The Ninth Jedi」の配信が決定している。Volume1で描かれた始まりの物語と、来年からのシリーズの物語を繋ぐ本作を手掛けた塩谷監督は、神山監督とも話し合って制作に臨んだそうで、「(話し合いは)十分しました。先のシリーズも発表されているので、僕が作るエピソードは架け橋になる位置づけなんです。時期的に描ける範囲を聞いたうえで、どうすべきかは塩谷に任せるよ、ということでバトンを受け取ったんです」と制作の裏側を明かした。
そして、ファンに向けて「泣いてほしい!カーラが、石田彰さんの演じている今回初登場するドロイドのテトとタッグを組んで冒険するというお話になっています。泣けるっていうと、泣くのが難しいですよね。泣けないです(笑)」とメッセージを贈り、「この先のシリーズに繋がっていることを考えて作っていますので、長い目で見ると1つになるところもあるんじゃないでしょうか」とアピールした。
「彷徨う者たち」はキネマシトラス制作で、Volume1で逃亡中の“元ジェダイ”の物語を描いた「村の花嫁」の続編となる作品。本作を手掛けるのはVolume1から続投で「スター・ウォーズ」を愛してやまない垪和等監督だ。
オーダー66の後の銀河を舞台に、その正体を隠して旅を続けるエフの物語の続きを描く本作について、垪和監督は「僕ら日本人も世界もなんだか閉塞感があって。戦争があって僕らも一体どこに向かっているんだろうと思うことは、オーダー66の後のジェダイやパダワンたちにも共通する、そして今作の舞台の惑星でも起きていることなんです。未来に繋がるような話になったらいいなと思って作りました」と作品に込めた想いを語った。
そして「以前デイブ・フィローニさんと話をしたんですが、『スター・ウォーズ』は寓話だと言ってたんです。観て楽しいことはもちろんですけど、その向こう側にテーマ性をもたせるということが『スター・ウォーズ』の肝なのかなと。せっかくこういう立場になれたので、きちっと世界平和への想いを恥ずかしげもなく描こうと思ったんです」と、「スター・ウォーズ」を深く愛する垪和監督だからこその熱い想いを明かした。
「ユコの宝物」は同じキネマシトラスが手掛ける新作で、「プリンセス・プリンシパル」や「東京マグニチュード8.0」などを手掛けた人気クリエイターの橘が監督を務める。本作は旧三部作の主人公ルーク・スカイウォーカーの故郷であり『スター・ウォーズ』ではおなじみの惑星タトゥイーンを舞台に、両親を亡くした甘えん坊の男の子ユコと、そんなユコをどんな時もそばで守るモフモフでかわいいクマさん型のお世話ドロイドのビリーのキュートな冒険を描く物語だ。
日本の“カワイイ文化”と「スター・ウォーズ」が見事に融合した本作について「(ルーカスフィルムは)すごく懐が深いなと思いました。こんな詰め込んだら怒られるんじゃないかなと思っていたのですが、のびのびすることができました。ドタバタしてみんな家族になるという、子どもが観ても楽しめるような明るい物語になればいいなと思って作っていました」と語り、「イースターエッグ的にたくさん登場させていいですか?と聞いたら、いいですよとルーカスフィルムに言っていただいたので、これまで『スター・ウォーズ』に登場していたいろんな宇宙船が出てきます。大変な思いをして描いたクリーチャーも出てくるので、観てほしいです」と、「スター・ウォーズ」ファン必見の楽しい隠しネタが多く登場していることを明かした。
「The Smuggler」はVolume1にも参加したTRIGGERの大塚監督が手掛ける完全新作。「スター・ウォーズ」を観たことがきっかけで映画の道を志したほど大ファンである大塚監督は、ジェダイのローブ姿で登場した。ライトセーバーアクションも楽しめるアクション活劇であり、「スター・ウォーズ」のレジェンドキャラクターであるハン・ソロと同じ“ならず者”の密輸業者のチタを主人公に描く本作について「前回の『The Elder』の続きも考えたんですが、『スター・ウォーズ』でやりたいことがありすぎて。前回はシリアスな時代劇ふうのテイストでやったんですけど、絵柄も漫画やアニメっぽく、楽しい活劇的な作品にしようと思い、新しい挑戦をすることにしたんです。僕が『スター・ウォーズ』を最初に観たのは中学生の時なんですけど、その時に感じた『スター・ウォーズ』の印象をこの20分弱に詰め込みたいと思って作りました」と大ファンだからこその熱い想いを語り、「映画だけじゃないシリーズもあるので、そちらも追っかけている方には、第一声を聞いた時に『あれか!』と思う方もいらっしゃるんじゃないかと思います」と笑顔を見せた。
「極楽鳥の花」はアニメーションシリーズ「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」や「スター・ウォーズ レジスタンス」の制作に参加し「スター・ウォーズ」のアニメーションを知り尽くしたポリゴン・ピクチュアズがVolume3で初参加し制作。「スター・ウォーズ」の象徴でもある“光と闇”の狭間で揺れ動く若いパダワンの少女ナキメの物語を描く。
本作を手掛ける吉平 "Tady" 直弘監督は、“光と闇”というテーマを選んだ理由について「今回のお話を作る時に、ほかのスタジオさんが作ってない物語にするにはどうすればいいのかを最初に考えて、日本の古い話を『スター・ウォーズ』に持ってきたらおもしろいなと思ったんです。耳なし芳一の話が思い浮かびまして、目をつぶっているんだけど、なにかが見えているんだろうと思って、そこから着想を得まして『目に見えないものを描こう』『そうすることでビジュアル的にもフォースを描くことができるのでは』と思いました」と告白。
そんな本作で主人公ナキメを演じる声優の黒沢ともよは「ずっと好きなタイトルの新しい試みだったので、参加させていただけてとってもとっても光栄でした。自分がまさかこの立場(パダワン役)で戦える日が来るとは思わなかったです。私も大塚監督みたいにローブ着てくればよかったと思いました。パダワンでいつか…!」と「スター・ウォーズ」初出演の喜びと小さな後悔を語った。
本作はアニメーションの制作よりも先に声の収録をしたそうで、「特徴的なことが1つありまして、監督が全部演じきってみた、というガイド音声をいただけるんです。監督が落語や講釈のように、1人で効果音なども演じたものをいただくんですが、それを受け取って『じゃあここはどうですか?』とか短い録音期間ですがさせていただいたので、一緒に作らせていただいているという感覚がありました」と制作中を振り返って明かした。
「四枚羽の詩」はVolume3で初参加となるプロジェクトスタジオQ制作。雪に覆われた惑星を舞台に、帝国軍が雪原から現れる戦闘ビークルAT-ATなどで攻撃を仕掛けてくるなか、スカウター付きのメカスーツに身を包み反乱軍として戦うプリンセスの主人公クラネが小さな子どもウーパスを守るため、勇敢に戦いに挑んでいく物語が描かれる。
そんな本作を手掛けるうえで、短編アニメーション「カセットガール」の監督を務めたほか、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」や「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」にも携わる小林監督は、「舞台は日本的なものということで雪国にしたんですが、シンプルに『スター・ウォーズ』っぽい作品を作りたいと思っていました。日本っぽい、和風的なものは、ほかに表現されている監督さんもいらっしゃるので、自分が感じる日本らしいキャラクター、予告編にもあるような変身シーンの要素を入れたりしました」と語り、「ストーリーの中心には出会いや縁だったり、『スター・ウォーズ』1作目のような冒険の始まりを描いています」と「新たなる希望」に重ねて描いた物語について明かした。
「BLACK」はVolume3で初参加となるデイヴィッドプロダクション制作。手掛けるのは、スタジオジブリの宮崎駿監督作品をはじめ、クエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』(03)のアニメパートや名作アニメ『AKIRA』など数多くの作品で原画を手掛ける日本有数のトップアニメーターの大平監督だ。
その独自の“ビジョン”で描くのは、「スター・ウォーズ」には欠かせない帝国軍のストームトルーパーの物語だが、「最初にお話をいただいた時に、『スター・ウォーズ』のウォーズの部分、戦争をピックアップして描きたいと思いました。フォースやジェダイではなく、モブとして出てきて消えていくものたちの人生や想い、戦争に対する闇みたいなものを表現できればと思って制作しました」と、名もなきストームトルーパーに焦点を当てた理由を明かした。
そして、「今回海外のアニメーターさんにも参加してもらっていて、皆で練り上げていったという感じでした。1シーン1分近く、背景もキャラクターも動き続けるというアニメーターにとってはストレスフルなボリュームですが、仕上がった時のものすごい高揚感があってアニメーターとしての楽しさや嬉しさはある作品になっていたと思います」と制作の裏側を語った。
「The Bounty Hunters」はVolume3で初参加となるWIT STUDIO制作。「スター・ウォーズ」にはハン・ソロとチューバッカ、R2-D2とC-3POなどたくさんの名コンビが登場しているが、本作に登場するのは腕っぷしが強くてクールな賞金稼ぎのセブンと、アサシンモードになると大暴れする医療用ドロイドIV-A4(イヴァフォー)といういままであまり描かれてこなかった組み合わせのコンビだ。
本作を手掛けた山元隼一監督は「『スター・ウォーズ』という作品にある光と影をテーマにしたいなと思っていたんです。IV-A4もビジュアルにギミックがありますのでそういう光と影があったり、セブンは自分の中の葛藤も抱えつつどう成長するかという彼女の変化を観て頂けるといいなと思っていますし、そういう2人の物語を描ければと思っていました」とバディの冒険譚を描いた理由を明かした。
本作で主人公のセブンを演じた声優のファイルーズあいは、オリジナルドラマシリーズ「スター・ウォーズ:アコライト」で双子のメイとオーシャの日本版声優を担当していた。本作への出演について「『アコライト』ではオーシャとメイを演じさせていただいて、それが終わったあとにオーディションの話をいただいて、『スター・ウォーズ』続きで、すごくご縁を感じていました。チャンスに恵まれましてセブンを演じられたことに感謝しております。アニメだからこそ描けるような表現で多彩に描かれていて、『スター・ウォーズ』という作品の魅力がより多層的になったんだなと実感しました。可能性は宇宙のごとく無限大にあるんだなと改めて思います」と想いのたけを語った。
さらに、「話し方も粗野でダークヒーローのようなセブンですが、不当に扱われてしまう子どもたちのために立ち上がる正義感の強いところもあるんです。台本を読んで小学生のころエジプトに住んでいた時、自分より小さな子がなにかちょうだいって手を出してきていて、地球の反対側にいったらこんな現実があるんだと思ったことを思い出しました。作品を観て自分もセブンのようになりたいなと思いましたし、セブンのように強くて自立してちょっとお茶目な部分もある魅力的なキャラクターを任せていただいてとても光栄です」と、自分の経験と重ねて明かした。
ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化に大きなインスピレーションを受けて生まれた「スター・ウォーズ」のルーツである“日本”で、「スター・ウォーズ」のレガシーを受け継ぎながら日本のアニメ特有の“可愛らしさ”や“キャラクター性”などを新たに盛り込んだ9作品。日本が世界に誇る9つのアニメスタジオが独自の“ビジョン”で描く新たな「スター・ウォーズ」の物語をぜひ堪能していただきたい。
文/山崎伸子
